第14章 荻原相馬

荻原和夏の手が、血を拭う途中でふいに止まった。

視線を落とし、まるで彫像みたいに、そこに立ち尽くす。

冴島羽美は、荻原和夏が黙ったままなのを見て、自分も身動きできなかった。下手に動いたら、この狂った女が突然キレて、自分を殺しかねない――そんな恐怖が喉元に張りついている。

しばらくして、荻原和夏が小さく頷く。額の血を拭ったハンカチを、ごみ箱へ放り投げた。

「教えてくれてありがとう。部屋に戻る」

さっきまでの声と違う。何かが詰まったみたいに、掠れて低い。

冴島羽美は呆然と頷き、荻原和夏の背中を見送った。

その姿が2階の奥へ完全に消えてから、ようやく力が抜け――床へへたり込む。

「...

ログインして続きを読む