第28章 冴島零の妹

二人の男が、無言のまま視線をぶつけ合う。

一言も交わしていないのに、荻原和夏には空気の中に濃い火薬の匂いがする気がした。

(どうしよう。片方は元カレで、片方は旦那。二人とも……まだ、私に気があるみたい。殴り合いにでもなったら? そのとき私、どっちの味方をすればいいの?)

胸の鼓動がうるさいほど速い。落ち着けと言い聞かせても、身体が言うことをきかない。

(私ひとりじゃ止められない。誰か呼ばないと……野口先生、針金を探すだけでそんなに時間かかるんですか。なんでまだ来ないの)

荻原和夏は裏口のほうを何度も見た。

今すぐ野口友樹先生が飛び込んできて、この凍りついた空気を壊してくれれば――...

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