第46章 通報しろ

荻原和夏は、大学時代に起きたあの一件を、いまでも忘れていなかった。

学内の公式サイトには、いつからか彼女にまつわる噂が張り付くように残り続けた。私生活が乱れている、男関係が派手だ――そんな下卑た文言ばかり。

その頃から、学生たちの視線は露骨に変わった。教室でも廊下でも、まるで汚れたものを見るみたいに。

図書館のような静かな場所だと、なおさらひどい。息を潜めた嘲りが、耳に刺さる。

「ビッチ」

誰かが、笑いながらそう吐き捨てるのが聞こえたこともある。

学校側も無関心ではいられなかったのだろう。ある日、呼び出されて職員室で事情聴取を受けた。

荻原和夏は必死に否定した。全部デマだ、と。...

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