第48章 消えた

荻原和夏は弟の病室の前まで来ると、そっと扉を押し開けた。だが――中のベッドは空っぽだった。

「……荻原相馬?」

眉をひそめ、ベッド脇へ歩み寄ってシーツに手を当てる。まだ微かに体温が残っている。離れたばかりだ。

「またどこ行ったのよ……」

小さく溜息をついた、その背後。

すり足の気配がじわりと近づいてきた。

医者か看護師を探して居場所を聞こう――そう思って振り向いた瞬間、黒い影が彼女の頭めがけて振り下ろされる。

「おはよう、姉ちゃん。花冠、すっごく似合ってる」

聞き慣れた声。白い顔に、場違いなほど明るい笑み。

「……相馬!」

驚きで肩が跳ねたものの、すぐに理解した。いまの犯...

ログインして続きを読む