第64章 優しい男

原村美保子は、こちらへ歩み寄ってくる原村奈那子を一切無視した。

そのまま車に乗り込み、ボディーガードに向かって吐き捨てるように言う。

「早く出して。ここから離れるのよ」

原村奈那子は、ようやく頼れる後ろ盾が来たのだと思っていた。

だが、美保子が助けるどころか逃げるように去ろうとするのを見て、顔色が変わる。

慌てて車の横へ駆け寄り、窓をバンバン叩いた。

「お姉ちゃん、何してるの? あの二人を懲らしめてくれるんじゃなかったの? 早く降りてきてよ!」

――降りる?

冗談じゃない。

原村美保子は今すぐにでも、この女を撃ち抜いてやりたい気分だった。

よりにもよって、自分が一番敵に回...

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