第71章 危険な男

荻原美菜の視線は、熱を帯びる一方だった。いまや白石月乃のファンミーティングなど、頭の片隅にも残っていない。

一生「お金持ちの奥さま」になることに比べれば、芸能人なんてただの芸能人だ。自分が冴島零の子を産む母親にさえなれば、会いたいスターのひとりやふたり――電話一本でどうとでもなる。

「……和夏……」

床に倒れた冴島零は、なおも荻原和夏の名を掠れ声で呟いていた。

荻原美菜の瞳に宿る嫉妬の炎が、じりじりと濃くなる。どうして、あの荻原和夏にそこまで惚れ込めるのか。いったい何を飲ませたら、こんなふうに男は狂う?

「あなたがあの女をどれだけ愛してようが関係ない……この子を産むのは、私だけ」

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