第113章

 具体的な光景は、どうしても思い出せない。

 けれど、骨の髄に焼き付いたあの絶望と恐怖だけは、いまもなお、全身の血管を伝って心臓へと押し寄せてくる。

 セレステの震えは、もう自分ではどうすることもできないほど激しくなっていた。

 かちかちと、歯が勝手に鳴り続ける。

 息が詰まって死んでしまいそうなその恐怖を、どうにか痛みで上書きしようとするかのように、彼女は半ば錯乱したように頭を振りかぶり、ソファの木製の肘掛けへ何度もぶつけた。

 額に鈍い痛みがじわじわ広がるだけで、効果などあるはずもないのに――。

 場面は変わり、西海岸へ向かうプライベートジェットの機内。

 ルシアンはゆった...

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