第149章

 アントニオは言葉を切り、ルシアンへ視線を向けた。

「だからあの時、私はこう思ったのです。奥様は、世間が思っているほど完璧な愛情や陽だまりの中で生きておられるわけではないのかもしれない、と。誰にも言えない……重い何かを背負っておられるのではないかと。ただ、それを隠すのがあまりにも上手だったか、あるいは当時の状況では、どうしても口に出せなかったのか……」

 ルシアンの心は、じわじわと暗い底へ沈んでいく。

「レナートにすら打ち明けられないことだと?」

 レナートは誰よりもセレステを溺愛していたはずではなかったか。

 エミリーが死んだ時でさえ、レナートはイザベラのようにセレステを激しく憎...

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