第15章

 セレステが、洗面台のそばにあった金属製のゴミ箱を倒してしまったのだ。

 彼女は冷たい大理石の洗面台の縁を両手で死に物狂いに掴み、身体をがたがたと震わせていた。

 突き飛ばした?

 私が、エミリーを突き飛ばした?

 違う……そんなはずない! 絶対にあり得ない!

 私はやってない! 彼女を傷つけようなどと、一秒たりとも考えたことなんてない!

 セレステは心の中で声なき悲鳴を上げていた。

 混乱した記憶の破片が脳内を狂ったように駆け巡り、ただでさえ残り少ない理性を粉々に打ち砕いていく。

 港の喧騒、耳をつんざく銃声、パニックに陥り逃げ惑う人々、そして、焦ったように自分に向かって走...

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