第177章

 彼女がダニエルと一緒にいる姿を見たとき、得体の知れない苛立ちと、殺意にも似たどす黒い怒りが込み上げてきたからかもしれない。

 もっとも、その感情の名が『嫉妬』であると、彼が遅まきながら気づいたのはずっと後のことだが。

 あるいは――記憶を混濁させた彼女が、自分を「五年間連れ添った最愛の夫」と思い込み、本物の妻のように彼の感情を気遣い、病室のベッドの傍らで甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた、あのときかもしれない。

 それとも、下界から隔絶されたこの孤島で、彼女と共に過ごした日々のなかで静かに育まれた情愛ゆえか。

 いや、おそらく確たる理由などないのだろう。

 愛とは、ただそこにあるもの...

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