第183章

 護衛の男は無言で頷き、腰のベルトからあらかじめ用意していた注射器を素早く抜き取った。

 ルシアンの意識が父親に向き、互いに銃を構え合って対峙したその一瞬の隙を突き、男は猛然と彼に飛びかかる。

「ルシアンさん、危ない!」

 視界の端でそれを捉えたアントニオは血の気を失い、鋭い警告の声を上げながら銃口を向け直した。

 バンッ!

 銃声が轟く。

 アントニオの放った銃弾は、ルシアンに襲いかかった護衛の眉間を正確に撃ち抜いた。鮮血と脳漿が瞬時に飛び散る。

 しかし、ほんの半歩だけ遅かった。

 被弾する直前、男は握りしめていた注射針をルシアンの首筋へ容赦なく突き立て、中の淡いブルーの...

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