第184章

 ニューヨーク、国際空港。

 ヴェロニカは身にまとったカシミヤのコートをきつく掻き合わせ、深く帽子を被り直した。

 サングラスで顔の半分以上を隠してはいるものの、それでも誰かに見咎められるのではないかと怯え、うつむき加減で足早に人混みをすり抜けていく。

 一見すると安全で快適なイギリスの屋敷を離れ、彼女にとって危険に満ちたこのニューヨークの地へ舞い戻るには、それこそ一生分の勇気を振り絞らなければならなかった。

 しかし、数日前に仕事で外出したイザベラと、ぱったり連絡が取れなくなってしまったのだ。

 ルシアンの庇護を失うのではないかという不安に終始苛まれ、すでに心身ともに限界を迎えて...

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