第23章

 ルシアンがどうやって火の手に飛び込んできたのか、セレステにはわからなかった。

 髪は乱れ、高価なスーツのジャケットはどこへやら、白いシャツは煤と焼け焦げた痕だらけになっている。

 頬にははっきりとした擦り傷があり、血が滲んでいた。

 彼はセレステを死に物狂いで抱きしめていた。先ほど飛び込んで転がった瞬間、彼は自らの背中で、降りかかる炎の大部分から彼女を庇ったのだ。

 だが、その瞳には、死地を脱した安堵も、彼女を案じる色も微塵もない。あるのは、天を焦がすほどの怒りだけだった。

「ここで何をしてる!!」

 ルシアンは怒号を上げ、セレステの胸ぐらを掴んで床から引きずり起こした。

「...

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