第31章

 消毒液の臭いが、吐き気を催すほどに馴染み深い。背中に感じる柔らかい感触も、まるで幻のように現実味を欠いていた。

 セレステは、意識の冷たく暗い深海を長く漂いすぎていた。あまりに長すぎたせいで、目を覚ました今でさえ、まだ夢の中にいるような気がする。

 重い瞼をわずかに持ち上げると、突き刺さるような光に生理的な涙がにじんだ。

 ここは、天国なのだろうか。

 だとしたら、なぜ自分は地獄に落ちていないのか。

 自分のような罪人に、こんなにも暖かく快適な場所は相応しくないはずなのに。

 だが次の瞬間、見覚えのある顔が視界に飛び込んできた。

「セレステ? 気がついたのか?」

 目の前に...

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