第38章

 セレステは、びくりと身体を強張らせた。

 長い年月の果てにようやく記憶の底で薄れかけていた、あの波止場で自分がエミリーを突き飛ばしたという噂が、再び鮮明に蘇ってくる。

 極限まで薄く膨れ上がった膿瘍にそっと触れた途端、無残に弾け飛ぶかのように。

「いやっ!!!」

 セレステは激しく頭を抱え込み、自身の頭皮を力任せに掻きむしった。

 たちまちのうちに、十本の指はどす黒い血に染まる。

「私じゃない! 突き飛ばしてなんかない! エミリー! 私じゃないの! 信じて! ああああッ!!」

 彼女は狂乱し、床を転げ回り、泣き叫び、自らの頭を床に打ち付けた。

 魂を引き裂かんばかりの罪悪感...

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