第47章

 いつの間にか顔が冷たくなっていた。手を伸ばして触れてみると、指先が濡れた涙の痕をなぞった。

 これほど長く、そしてこれほど穏やかな夢を見ながら眠れたのは、決して安眠とは言えなくとも、彼女にとっては珍しいことだった。

 夢の中で、あんなにも静かで温かな過去を見たのも久しぶりだ。

 もっとも、その静けさも温かさも、本来彼女とは何の関係もないものだったが。

 彼女はただ、背景に潜む物言わぬ傍観者であり、密かにルシアンを見つめながら、決して彼の視界には入れない、余分な影にすぎなかった。

 そう、夢の中と同じように。

 ルシアンは、一度も彼女を愛したことなどなかった。

 彼の優しさも、...

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