第53章

「手編みのレースなの。きっと気に入るわ」

 ヴェロニカはさらに声を潜め、ルシアンのシャツの襟元を指先でなぞるように撫でた。

「夜……着て見せてあげる。いいでしょ?」

 その言葉に含まれた暗示は、もはや零れ落ちんばかりだった。

 ルシアンはさらに甘やかすような笑みを浮かべ、手を伸ばすと、指の背でヴェロニカのなめらかな頬を軽く擦った。

「今夜は無理そうだな。急ぎの書類がいくつか入ってね。君と映画を観た後、会社に戻らなきゃならない。かなり遅くなるかもしれない。数日して、手元の仕事が片付いたら、また君のところに帰るよ。いいかい?」

 彼の肩に寄りかかっていたヴェロニカの身体が、気づかれな...

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