第58章

 彼は唐突に興奮した様子を見せた。

「あの年の春、病院へ向かう道中で喘息の発作が起きたのです。非常に重い発作でした。同行していた医師の持ち合わせの薬では足りず、おまけに道はひどい渋滞で。病院にヘリコプターを要請してもすぐには到着できない状況で……私を救ってくれたのは、あなただった!」

 彼ははっきりと覚えていた。

 もう駄目だと思ったその時、水色のシャツを着てリュックを背負った若い娘が駆け寄ってきたことを。

 彼女の助けがあったからこそ、アンドレは救急車が到着するまで持ちこたえることができたのだ。

 彼の言葉を聞くうちに、セレステの脳裏にも忘れかけていた過去の記憶がゆっくりと蘇って...

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