第67章

 ルシアンはその異変に触れ、腕をびくっと強張らせた。

 無恥な者たちへ向けられていた瞳の奥の嵐が突如として淀み、すぐさま暗い炎へと変わる。

 だが、彼はどうにかそれを堪えた。

「アントニオ、医者を呼べ」

 彼は振り返り、冷ややかな声で命じる。

 アントニオは多忙な中を振り向き、セレステの異変に目を留めると、慌てて視線を伏せた。

 そして早口で答える。

「ルシアンさん、専属医がすでに向かっております。ただ……」

「ただ、何だ?」

「東郊から向かっているため距離がありまして……十分ほど前の電話によると、前で突発的な事故が起きて渋滞しているとのことです」

 アントニオの声は次第...

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