第68章

 セレステはドアの裏でしばらく硬直していたが、やがて深呼吸を一つし、そっとドアノブを回した。

 彼女はドアを少しだけ開け、おそるおそる外を窺う。

 廊下には誰もおらず、メイドたちの姿も見えない。何かに追われているのだろうか。

 しかし、自室に駆け戻るべきか迷っていたその時、階下からかすかな話し声が聞こえてきた。

 ルシアンの声だ。

「薬はすぐに届けろ。確実に飲ませるんだ。いいか、俺が指示した通りにしろ。絶対にミスは許されない」

「はい、ルシアンさん。すでに手配済みです。至急届けさせます」

 アントニオが答える。

「ああ」

 ルシアンは少し間を置き、さらに付け加えた。

「あ...

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