第84章

 それから数日間、ヴィトーリ館は息が詰まるような静寂に包まれていた。

 ルシアンは書斎にこもりきりになった。アントニオが定時の食事を運び、必須の報告を行う以外、何人たりとも彼を煩わせることは許されなかった。

 氷点下まで冷え込んだ異様な空気の中、使用人たちは足音を忍ばせ、極力声を潜めてやり過ごした。呼吸すらためらうほどの緊張感だった。些細な物音ひとつで、書斎に鎮座する起爆寸前の火薬庫に火をつけてしまうのではないかと、誰もが戦々恐々としていた。

 その不気味な平穏が破られたのは、四日目の夕暮れ時のことである。

 アントニオは書斎の扉の前に立ち、何度か深呼吸を繰り返してから、ようやくノッ...

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