第97章

 マーサは、セレステがまだ頑なにこの場所で待ち続けている姿を目にして、たちまち顔に申し訳なさを滲ませた。小走りで歩み寄り、彼女の両手をそっと握りしめる。

「奥様、ルシアンさんは……味でお気づきになったようで、召し上がろうとしません。ごめんなさい、私ではどうにも……」

 セレステの瞳から、瞬く間に光が失われた。

 マーサはさらに胸を痛め、慌てて慰める。

「大丈夫ですよ、奥様。ルシアンさんは今、少し虫の居所が悪いだけです。後できっと召し上がってくれますから」

 セレステは伏し目がちに、ただ黙り込んでいた。

 だが、今にも泣き出すのではないかとマーサが思ったそのとき、彼女は深く息を吸い...

ログインして続きを読む