第4章

 三日目の朝、守衛が食事を押し込みながら、ついでとばかりに口を開いた。

「ボスが外へ出ろとよ」

 私は二秒ほど呆然とし、自分が今何を聞いたのかをようやく理解した。

 壁に手をついて立ち上がる。両脚は震えていたが、胸の奥ではここ数日で初めて安堵が広がった——子どもは無事だ。外にさえ出られれば、まだチャンスはある。

 階段の上から漏れる光はすでに眩しかった。一歩ずつ上へ向かい、目を上げると、出口にはベアトリスが立っていた。完璧なメイクを施し、口角には自信に満ちた笑みを浮かべている。まるで、ずっと待ち構えていたかのように。

 私は立ち止まることなく、彼女を避けようと足を踏み出した。

「逃げる気ね!」

 彼女は私の手首を強く掴んだ。爪が皮膚に食い込む。

「誰か来て!ジェマが逃げるわ!」

「ローワンが私を出してくれたのよ」

「嘘よ、ローワンがそんなこと——」

 彼女の踵が、宙を踏んだ。

 私が手を伸ばす間もなく、ベアトリスは階段から転げ落ちた。石の床に激突し、ドレスの裾が乱れ翻る中、彼女は両手で腹部を必死に押さえた。両脚の間から赤黒い血が滲み出し、痛々しく広がっていく。彼女は引き裂かれるような悲鳴を上げた。

「私の子どもが……」

 父と母がどこからともなく飛び出してきた。父は彼女を抱き起こそうと駆け寄り、母は背筋を伸ばし、ナイフのような視線を私に突き刺した。

「この悪魔!妹の子どもを殺したのよ!」

 ローワンが部下を引き連れて出口に現れた。床に倒れるベアトリスを一瞥しただけで、彼の顔色は一変した。踏み出す一歩一歩が、凍りつくような寒気を帯びている。

 父が先に口を開いた。正確に計算された震えを帯びた声だった。

「ジェマがベアトリスを突き飛ばしたんだ。私たち二人がこの目で見た——ベアトリスは彼女を引き止めようとしただけなのに、いきなり手を出しおって」

 母がむせび泣きながら言葉を継いだ。

「ベアトリスはあなたの子どもを身籠っていたのよ!帰ってきたら驚かせようと思っていたのに……ジェマのせいで、あなたとベアトリスの子どもが……」

「守衛が、私を出していいと言ったのよ。私は突き飛ばしてない。彼女が自分で足を踏み外したの」

 ローワンの目は私を射抜いていた。

「たった今、お前が彼女を突き飛ばすのを、俺はこの目で見た」

 心臓が重く沈み込んだ。私は彼の目を見つめた。知っていると思っていたその目は、今はまるで初めて見る他人の目のようだった——静かで、確信に満ち、彼自身が選択した真実をただ述べているだけのような目。

 口を開きかけたが、声が出るより早く、母の泣き声が急激に高くなった。

「ベアトリスはもう三ヶ月だったのよ!シンクレア家の子どもが、こんな風に……」

 ローワンの手がゆっくりと拳を握りしめた。関節が白くなり、彼の中で何かが一寸ずつ崩れ落ちていくようだった。彼は顔を上げ、血走った目で、しゃがれた見知らぬ声で言った。

「どの手で彼女を突き飛ばした。俺の子を殺したんだ、その代償を払ってもらう!」

 私は答えなかった。

 銃声は唐突だった。焼け焦げるような痛みが左腕を貫く。私は石壁に激突し、腕がだらりと垂れ下がった。血が指の隙間から流れ落ち、石畳に滴り落ちる。私は下唇を噛み締め、声を上げそうになるのを必死に堪えた。

「誰一人として、こいつの傷の手当てをするな」

 部下たちが私を再び鉄の扉の中へ引きずり込み、放り込んで鍵をかけた。

 私は床にへたり込み、無事な方の手で傷口を押さえたが、血は指の隙間から滲み出し、止まらなかった。外から父の声が漏れ聞こえてきた。自分には関係のない事柄を述べるように冷徹な声だった。

「ローワン、彼女はあなたの子どもを殺したんだ。手加減は無用だ」

 母が続いた。ふわりと軽い声で。

「死んでくれた方がすっきりするわ」

 私は額を石壁に押し当て、目を閉じ、何度も自分に言い聞かせた。子どもはまだいる。この難局を乗り越えれば、チャンスはあると。

 腹部の激痛が前触れもなく押し寄せてきた。私は息を呑み、体を丸めた。波のように次々と襲い来る痛み。手で床を突こうとしたが、腕から力が抜け、そのまま崩れ落ちた。冷たい石畳が頬に触れ、一瞬だけ意識がはっきりしたが、すぐにまた激痛が襲う。先ほどよりもさらに深い痛みが。意識が暗闇の中でゆっくりと散り散りになっていく。

 目を覚ますと、ベアトリスが入り口にしゃがみ込み、私を見下ろしていた。口角には満足げな、気怠い笑みが浮かんでいる。

「お姉ちゃん、やっぱりお礼を言わなくちゃね」

 私は顔を上げた。

「あの子どもは元々厄介の種だったのよ。時間が経てば、いずれローワンに調べられるところだった」

 彼女は小首を傾げた。

「あなたが騒ぎを起こしてくれたおかげで、綺麗さっぱり片付いたわ。おまけに、彼に私への深い罪悪感を植え付ける口実にもなった——彼は私と結婚するわ。子どもを失った償いとしてね。結婚式は五日後よ」

 足音が遠ざかり、廊下は完全に静寂に包まれた。

 私はうつむいた。下半身に生温かい感覚があり、汗かと思って手を伸ばすと、手のひら一面にべっとりと血が付着していた。

 私はその手を長い間見つめていた。頭の中は空っぽで、何も考えていないようでもあり、同時にすべてを悟ったようでもあった。

 子どもは死んだ。ローワンに殺されたのだ。

 前世で死んだ時も、こんな風だった——周囲には誰もいなくて、冷たくて、暗くて、誰も知らず、誰も気に留めなかった。

 やり直せば違う結果になると思っていた。だが、二度目の人生でも、ローワンはあの嘘を信じることを選んだのだ。

 私は目を閉じた。泣きはしなかった。

 何日経ったのかわからない。鉄の扉の隙間からパンの欠片が差し入れられた。硬くて冷たくて、喉に詰まりそうだったが、私はすべて食べた。生き延びることが何よりも重要だった。生きてさえいれば、ラクランが来てくれるかもしれない。彼が本当に来てくれるかはわからなかったが、私は待つことを選んだ。外の喧騒が次第に大きくなるまで——結婚式が始まったのだ。

 鉄の扉が開いた。

「迎えに来た」

 その声はあまりにも耳慣れないもので、この状況において正解すぎるため、かえって罠ではないかと疑ってしまうほどだった。私は顔を上げなかった。

 その直後、誰かが私を抱き上げた。

 私は一瞬強張り、目を上げた。ラクランだった。眉をひそめ、私の腕の傷に視線を落としたが、すぐに目を逸らし、何も言わなかった。

 屋敷の上空から、薔薇の花びらが舞い降りてきた。空一面に広がり、その中にはダイヤモンドや宝石の欠片が混じり、陽光を浴びてきらきらと輝きながら、芝生全体を覆い尽くしていく。

 私は呆然とした。

「これは——」

「結婚祝いだ」

 彼は私を抱き抱えたまま歩き出し、天気を語るような平坦な声で言った。

「シンクレアのゴッドファーザーへのな」

 振り返ると、少し離れた人混みの中で、ベアトリスが純白のウェディングドレスを着て、顔を上げて誇らしげに笑っていた。ローワンは彼女の隣に立ち、仕立ての良いスーツを着て、彫像のように冷淡な表情を浮かべていた。

 薔薇の花びらが空から降り注ぎ、芝生を覆い、宝石の輝きと混ざり合う。まるで夢のように美しい光景だった。

 私はラクランの腕の中で顔を上げ、その花びらを見つめていると、不意に目頭が熱くなった。

 その理由は自分でもわからなかった——ローワンのためでも、あの結婚生活のためでもない。ただ、生きているって素晴らしい、まだ空が見える、誰かに抱きしめられている感覚がある、まだ死んでいないのだと、そう思ったからかもしれない。

 私はその熱を押し殺し、微かに口角を上げて、彼の腕の中で低く囁いた。

「彼がこの結婚祝いを気に入ってくれるといいわね」

 ラクランの腕が少しだけ力強く私を抱きしめた。彼は何も言わなかった。

 足元は他人の土地で、頭上には薔薇が舞う空が広がっている。そして私はついに、誰の囚人でもなくなったのだ。

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