第100章

菊地杏奈は研究室へ戻るなり、葉山爺さんにもう一通メッセージを送った。葉山陸斗に医師の指示どおりの生活をさせるため、必ず人手を増やして見張ってほしい、と。

別に、葉山陸斗に深い情があるわけじゃない。

ただ――葉山爺さんから時折届く報告が、回を追うごとにやけに細かくなっていき、杏奈がとっくに忘れたはずの幼い日々を、少しずつ埋め戻してくるのだ。

母の面影は、記憶の中で年々ぼやけていた。

けれど葉山爺さんが寄越す情報が、そのぼやけた輪郭をなぞり直し、ばらばらの欠片をつなぎ合わせていく。

不思議な感覚だった。

心の奥に押し込んで忘れていた何かが、急に引っ張り出されて、目の前に並べられる。し...

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