第12章

菊地美波が怒りに任せて甲高く叫び、手にしていたバッグを振り上げて杏奈に叩きつけようとした。

だが杏奈も引かなかった。床に落ちていた花瓶の破片をひょいと拾い上げ、勢いのままぐいっと腕を伸ばす。鋭い欠片の先が、菊地美波の顔のすぐ前に突きつけられた。

「ねえ。ここ、切ったらどうなると思う?」

杏奈の声音は妙に落ち着いているのに、目だけが凶悪に光っていた。

「私があんたの顔に傷つけたらさ、葉山陸斗……まだ、あんたのこと好きでいられる?」

菊地美波は息を呑み、目を見開いたまま硬直した。呼吸すら忘れたみたいに喉が鳴らない。身体が勝手に後ろへ引ける。

その逃げ腰を許さず、杏奈が容赦なく美波のド...

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