第35章

翌日。菊地杏奈はアトリエへは行かず、動きやすいジャージに着替え、大きなショルダーバッグを背負って、意気揚々と車で生地市場へ向かった。

ここ数日、サンプル作りに追われて、いろんな生地を試した。けれど、どこか決め手に欠ける。だから今日は市場で掘り出し物を探すつもりだった。

菊地杏奈が服に興味を持ち始めた理由は、結局のところ「貧乏」だった。

祖母が亡くなったあと、菊地家に無理やり戻されたかと思えば長くは続かず、すぐに菊地健二に田舎へ送り返された。

村では近所の情けで食いつなぐ毎日。生き残るには勉強しかないと、歯を食いしばって机にかじりついた。

幸い成績はずっと良かった。学校も事情を知って...

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