第36章

程よい距離が、葉山陸斗にしゃべる余地を与えた。人波に紛れて追いすがり、なおも言葉を投げつける。

「美波は浮気相手なんかじゃない。論じるなら、おまえこそ俺たちの関係に割り込んだ不倫の当事者だろ。あのとき戻ってきて美波の婚約を奪うべきじゃなかったんだ」

「それなのに今も何度も美波を陥れて……性根が腐ってる。昨日、美波に手を上げたことを謝れ。何があっても、今回は土下座してでも許しをもらえ。そうしないなら、俺は絶対に許さない」

菊地杏奈は両手で耳を塞ぎ、嫌気が差して人混みを押し分け、さっさと外へ抜ける。

本当に、一秒たりともこのバカの声を聞いていられない。

ようやく耳障りな声が遠のいたとこ...

ログインして続きを読む