第38章

デザイナー部から、阿部律の姿が消えていた。

菊地美波のデスク、そのいちばん目立つ場所に置かれていたのは、たった数行の退職届。

菊地美波はそれを拾い上げるなり、くしゃりともせずにそのままゴミ箱へ放り投げた。

鼻で「ふん」と、見下したように鳴らして。

そして、去った阿部律はすでに菊地杏奈と向かい合い、オーロラアトリエの会議室で椅子に腰を下ろしていた。

「まさか、いちばん最初に来る“古い知り合い”が、あなただとは思わなかったわ」

夏川結衣と会ってからというもの、葉山グループのデザイナーが移ってくる可能性は杏奈も想定していた。

彼女の中では、まず夏川結衣が腹心を連れて移籍し、そこから少...

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