第43章

田辺翔太は、菊地杏奈の顔色がめまぐるしく変わっていくのを見て、何を考えているのか察した。湯呑みを置き、落ち着いた声で言う。

「……全部が君のせいってわけじゃないさ。葉山陸斗がちゃんと君と暮らしてくれていれば――」

杏奈が眉を寄せた瞬間、翔太はすぐに言い換えた。

「あるいは、きっぱり離婚してくれていれば。こんな騒ぎにならなかった」

「欲しいものは全部、ってことよね……」

杏奈は小さく呟いた。

このところの出来事のせいで、夜になると嫌でも三年間のことを何度も反芻してしまう。

あの日、たった一枚のハンカチ。あれだけで葉山陸斗を“運命に弄ばれた哀れな人”だと決めつけて、必死に引き上げ続...

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