第54章

菊地健二は車の鍵を握りしめたまま、追いすがるように外へ飛び出してきた。

「そんなに俺が憎いのか? だから、こんなものまで返すのかよ。……だったらおまえの血肉も、俺に返せってことだろ」

菊地杏奈は足を止め、横目で冷たく見据える。

「血肉? ……あんたに、そんなこと言う資格ある?」

「菊地健二。ママが死んだあと、あんたは私を田舎のおばあちゃんの家に押しつけた。おばあちゃんが亡くなってからは、私ひとりで田舎で暮らした。その間――一回でも私のこと、ちゃんと見た?」

杏奈の声は淡々としているのに、刃みたいに鋭かった。

「私が毎日何を食べてたか知ってる? 冬、何で暖を取ってたか知ってる? 学...

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