第56章

大野友菜は嬉しそうに菊地杏奈へ抱きついた。

「やっぱり杏奈がいちばんだよ。私のこと、いちばん大事にしてくれるって分かってた」

「ちょ、離して……息できないんだけど」

菊地杏奈は拗ねたふりをして言い返す。けれど腕にはまるで力が入っていない。

部屋の中でしばらくじゃれ合っていたが、田辺翔太から「今から飯行く?」と電話が入って、ようやく二人とも落ち着いた。

「田辺先輩、先に行っててください。私と友菜、すぐ行きます」

杏奈は耳元の後れ毛をさらりとかき上げ、ソファに転がっていた友菜を引っ張り起こす。互いの服の乱れを直し合い、みっともないところがないと確認してから、肩を並べて部屋を出た。

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