第62章

「私も帝京市にいなかったら、あなたと葉山陸斗の三年間の結婚生活なんて、悪い夢でも見てたんじゃないかって思ってたところよ」

 大野友菜の言葉に、菊地杏奈はふっと黙り込んだ。

 菊地美波の口から、あの二人が以前からつながっていたと聞かされた時――杏奈自身も、まったく同じことを思った。

 できることなら、全部、自分の悪夢であってほしかった。

 葉山陸斗の美しさは、夢の中だけに留まるべきだったのだ。

 自分へ手を差し伸べてくれた、あの瞬間のままで。

 それ以降のすべては、ただの執着。

 そのために払った代償も、結局は自業自得としか言いようがない。

 菊地杏奈は苦く唇の端を持ち上げた。...

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