第68章

騒然としていた病室が、すうっと静まり返った。

葉山陸斗も、菊地家の三人も、揃って菊地杏奈を見た。視線だけで人の身体に穴を穿てそうなほどの、あからさまな驚愕。

最初に我に返ったのは菊地健二だった。ふっと噴き出すように笑う。

「田辺先生も冗談がお上手だな。杏奈は小さい頃から田舎育ちなんですよ。高校だって出ているかどうか怪しいのに、あなたの後輩だなんて、そんなはずがないでしょう。あの子の面子を立てたいからって、そんな嘘までつくものじゃありません」

言いながら、菊地健二は娘を上から下までねめ回すように眺めた。

海外留学など、この娘にできるはずがない。そう言いたげな目だった。

晴子が死んで...

ログインして続きを読む