第74章

大野友菜は勢いよく菊地杏奈に飛びつくと、そのまま引き起こして何度もぐるぐる回し、頭のてっぺんからつま先までじっくり見回した。

「さすがに正気じゃないよね? あなたに菊地美波の心臓を提供しろとか言い出すほど、狂ってないよね? だってあなた、ちゃんと生きてる健康体じゃん。心臓移植って、基本的に臓器提供の意思表示がある人の——」

そう言いながら、友菜は杏奈のスマホに手を伸ばす。全部把握しないと気が済まない、とでも言わんばかりに。

杏奈は回されっぱなしのまま、ぎゃあぎゃあと騒ぐ友菜を横目に、怯えた様子で固まっている二人のマッサージ師へ軽く手を振った。

「もう大丈夫です。先に出てください」

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