第84章

夏川結衣は気まずそうに唇をきゅっと結び、しばらく言葉が出なかった。

菊地杏奈はテーブルの上から適当にうぐいす餅を一つつまみ、大野友菜へぽいっと放ってよこす。

「今のはただの口のあやよ。気にしないで」

「さっきのは勢いで言っただけで、私、オーロラアトリエの悪口なんて一言も言ってないからね」

夏川結衣はすぐさま流れに乗って、慌てて弁明した。

大野友菜は歯で袋を破り、うぐいす餅をがぶりと噛む。

「分かってるよ」

たったそれだけのやり取りで、三人の距離が変わることはなかった。けれど夏川結衣は、菊地杏奈が長いことアトリエに来なくなるのは正直嫌だった。ここで見慣れた顔が見えないだけで、不安...

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