第9章

杏奈はその夜、大野友菜と身を寄せ合うようにして眠り、久しぶりにぐっすり休めた。

朝は二人そろってアトリエへ向かい、それぞれの仕事に取りかかる。

まだ大して時間も経っていないのに、不意に教授から電話が入った。

着信表示を確認した杏奈は、途端に手元がもつれた。切られるのが怖くて、指先が震えるまま通話ボタンを押す。

「……教授」

三年前。周囲の反対を振り切って帰国し、葉山陸斗と結婚するために研究室の道を手放した。後ろめたさは消えない。しかも別れ際は、最悪だった。

国内の騒ぎは先輩たちも知っている。教授が知らないはずがない。

『うむ。昨日の件は翔太から聞いた。おまえは今すぐ研究室に戻れ...

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