第90章

菊地杏奈は火がついたように葉山邸へ駆け込んだ。山川に会うなり挨拶もそこそこに、すぐさま葉山爺さんのもとへ案内するよう求める。

少し前、葉山グループの株価はほとんどストップ安寸前まで落ちた。今はどうにか持ち直したとはいえ、年寄りの身に連日の心労がこたえないはずがない。

道中、ありとあらゆる可能性を想像して「覚悟はできた」と思っていた。だが書斎で、目の下に濃い隈をつくった葉山爺さんを目にした瞬間――杏奈は言葉を失った。

「おじいちゃん。会社のことは下に任せればいいの。あんまり無理しないで」

葉山爺さんは小さくため息をつき、山川に手で合図する。

ほどなく山川が茶を二つ、菓子皿をいくつか運...

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