第91章

菊地杏奈にとって、菊地家の工場を手に入れるのは時間の問題だった。葉山爺さんの後ろ盾があろうとなかろうと、結局は自分のものになる。だからこそ提示された条件にも心が動かない。なにより、葉山陸斗と「頻繁に顔を合わせる」――その想像だけで胃の奥がきしんだ。

葉山陸斗と菊地美波の関係を知ってから、離婚して、そして今の新しい生活に踏み出すまで。まだ三か月も経っていない。

長年抱えてきた感情が、そんな短期間で消えてくれるはずがなかった。

だから、会いたくない。

もう一度、同じ穴に落ちるのが怖い。

あんな男のために、これ以上なにかを差し出すなんて――まっぴらだ。

葉山爺さんは、その拒絶を見て取っ...

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