第92章

菊地杏奈は白目を天井まで押し上げる勢いでぐるりと目を回し、それからくるりと振り向いて、いかにも困り果てたという顔で葉山爺さんに笑いかけた。

無言のまま、目の前の有様を見てくれと言わんばかりに。

ここ最近ニュースを騒がせている話を、葉山爺さんが知らないはずもない。

だが、知っていたところで、目をつむって受け入れる以外に道はなかった。

医師から伝えられている病状は、葉山陸斗本人に告げた内容よりもずっと深刻だ。とはいえ、真実をそのまま表に出すわけにもいかない。

この年になった葉山爺さんに、若い頃のような働きを求めるのは酷だった。

「陸斗。杏奈とはもう話をつけた。これから三か月、おまえの...

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