第121章

それでも結局、井上友里子は鈴木結月を祖父母の家へ送り届けた。

 鈴木結月は家で大人しく夜まで過ごした。祖父母は寝るのが早い。ほとんど八時には床に就く。

 だから彼女は服と靴を身につけ、忍び足で外へ出る支度をした。

 こっそり家を抜け出すと、そのままタクシーを拾い、高橋悠人には連絡もしなかった。

 彼からは「今夜は来なくていい」とメッセージが届いていた。それでも、病院でひとりきりの彼を想像すると、どうしても胸が痛んだ。

 病院に着くと、鈴木結月は迷いなく高橋悠人の病室へ向かった。ドアに手をかけ、押し開けようとした、そのとき。

 中から聞こえてきたのは、聞き覚えのある女の声だった。

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