第145章

鈴木結月は鼻先をすっと鳴らし、かすれた声で言った。

「分かった……思い出した。あなたが私にくれた手紙」

――手紙?

高橋悠人の身体が、ほんのわずかに強張る。忘れるはずがない。彼女から返ってきた手紙は今も書斎にしまってある。人生でいちばん大切な記憶で、宝物だった。

封筒は黄ばんで古びても、返事を受け取った瞬間の胸の高鳴りだけは、昨日のことみたいに覚えている。

これまでの人生で、一生かけて思い出す価値のある出来事なんてないと思っていた。けれど彼女に関することだけは、すべて取ってある。あの手紙も――。

結月は彼から離れ、机の上に置いていた手紙を両手で持ち上げ、彼の前へ差し出した。声には...

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