第20章

  昔の鈴木結月は、賞状やトロフィーを手にした瞬間がいちばん楽しみだった。井上友里子から飴玉を一つもらえる――それだけで、胸の奥からじんわり嬉しくなれたから。

  けれど成長してから気づいた。

  井上友里子の「育て方」は、サーカスで動物を調教するのと大差ない。

  できなければ叱る。できれば飴を一つ、ご褒美として与える。

  ふいに結月は、ぼんやりとした既視感に襲われた。

  自分も、誰かに同じことをしていなかったか。ミルクキャンディを食べさせて、「世界でいちばん美味しいんだよ」と教え込んで――。

  でも、その相手の顔が、もう思い出せない。

  午後はちょうど体育があり、自...

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