第32章

吉田さんは、彼女が厄介な性格だということくらい最初から分かっていた。だが、旦那様が家を出た途端にここまで露骨に本性を剥き出しにするとは思っていなかった。

吉田さん自身、名家で長く仕えてきた人間だ。どんな修羅場だって見てきた。浮気相手がのし上がって正妻の座に収まったと思ったら、今度は別の愛人にあっさり取って代わられる――そんな話も珍しくない。

貧乏人が急に金を持つのは別にいい。だが、他人の金を盾にして威張り散らすのは話が違う。

何様のつもりだ。

吉田さんの目の奥に、ほんのわずかな侮蔑が滲む。けれど彼女は世渡りを心得た人間でもある。声を落として、柔らかく言った。

「何か召し上がりたいも...

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