第38章

 鈴木結月は心の中で鼻を鳴らした。芝居を打つってだけの話だろ。演技くらい、誰だって多少はできる。

 鈴木結月が知らないだけで――この街の別の場所でも、まるで同じ筋書きが進んでいた。

 高橋悠人が玄関のドアを押し開けた瞬間、リビングのほうから花瓶が斜めに飛んできた。反射的に身をかわさなければ、頭を割られていたはずだ。

 「まだ帰ってくる気があったのか?」

 ソファの脇に立つ高橋紀明は、怒りを顔いっぱいに貼りつけていた。

 悠人は相手を見た。視線がその顔に落ちた途端、胸の奥がむかついて仕方がない。

 眉や目元に自分と似たものを感じさせる顔。誰が見ても親子だと察してしまう、その「似てい...

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