第54章

 鈴木結月は首を傾け、手元の問題集へ視線を戻した。本当なら断るべきだったのに。いつからだろう。高橋悠人に対する、あの頃みたいな拒否感が、もう薄れてしまっている。

 気づけば彼がいつも近くにいて、結月に関わることの全部に、当たり前みたいに入り込んでいる。

 やがて彼女は小さく言った。

「試合なんて、誰でも見られるでしょ」

 高橋悠人は、どうせ「勝手に見れば」みたいな言葉が返ってくると身構えていた。だからその一言を聞いた瞬間、頭が真っ白になって固まる。

 少しして、彼は喉の奥で笑った。

「でも俺は、結月がいる試合だけ見たい」

 夜。結月がバスで帰宅する時間帯、車内には四高の生徒が彼...

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