第64章

「それがどうした。どうせあいつは俺の実の子なんだからな」

高橋紀明は、いかにも気にしていないふうに言い放った。

案の定、その一言が浅子の胸をちくりと刺す。子どもを持てなかったことは、浅子が一生抱えていく傷だった。四十を過ぎた今でも、どうしても手放せない。

紀明に、わざわざ彼女を刺激するつもりがあったわけじゃない。けれど浅子は、はっと顔を上げ、恨みを滲ませた目で睨みつけた。

そこでようやく、紀明は自分の言い方がまずかったと気づいた。

気まずそうに咳払いをして、取り繕う。

「悠人はな。冷たい顔してるけど、あいつだって……お前が本気で向き合えば――」

「藤井優子の息子でしょ。私が一生...

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