第80章

 鈴木結月は、壁に掛けられたイチゴのポシェットを見つめた。苺そのものみたいな形で、素材はぬいぐるみのようにふわふわしている。

 ……ちょっと子どもっぽい。

 そう思うのに、視線は何度もそこへ戻ってしまう。

 前の人生の少女時代、結月は遊園地なんてほとんど来る暇がなかった。こういう幼くて安っぽいバッグなんて、井上友里子の目には取るに足らないガラクタでしかなかったはずだ。

 でも、やり直せるのなら――一度くらい、この「子どもっぽさ」を試してみたくなった。

 親に「そんな飴おいしくない」と言われても、まずは自分の舌で確かめたい子どもみたいに。食べてみてから、好きか嫌いか決めればいい。

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