第86章

 周りの男子はまだ騒いでいて、西村夏輝に至ってはニヤつきながら言った。

 「うちの結月、マジで面子ありすぎだろ。あそこに立っただけで、完全に女神じゃん」

 その瞬間、高橋悠人が眉をひそめて口を開いた。

 「……黙れ」

 声は大きくも小さくもない。けれど近くにいた男子はだいたい聞き取れたらしく、さっきまでガヤガヤしていた列が、嘘みたいに静まり返った。

 高橋悠人は、ついこの前まで学年最下位だったのに、今は学年トップ。

 それでも誰も、彼を「普通の優等生」扱いなんてしない。

 高橋様の機嫌を損ねて、わざわざ死にに行くやつはそう多くない。

 しかも隣のクラスあたりには、多少事情を知...

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