第88章

鈴木結月が彼を見つけたとき、そこには「いま機嫌最悪。近づくな」とでも言いたげな顔があった。案の定、その圧だけで目の前の高1の後輩はすっかり怯んでいる。

 結月はゆっくりと彼のそばへ歩み寄り、指先でそっと制服の裾をつまんだ。

 言葉はないのに、距離だけがやけに近い。まるで、他人が割って入れない親しさ。

 その瞬間、村上駿介は思い出す。結月が以前、「一緒に勉強してる人がいる」と言っていたことを。あの日は適当にあしらわれたのだと思っていた。

 でも今なら、誰のことだったのか――少しだけ分かる。

 高橋悠人が学年最下位から学年1位へ跳ね上がった話は、あまりにも出来すぎていた。中間テストの結...

ログインして続きを読む