第121章

「玲奈、お前……」

佐藤玲奈は胸がドキリとした。

「何?」

「ちょっと変よ!」電話の向こうから、白崎雪乃がクスクス笑い出した。

「前は私と電話してる時、こんなに上の空じゃなかったわよ。正直に言いなさい、今考え事してたのは誰のこと?」

佐藤玲奈は言葉に詰まった。

「あのさ、私は今古画修復用の絵の具を買いに外出してるの。絵の具を選ぶのに集中してて上の空になっちゃいけないの?」

「えっ!あなたの心の中では、私がそんなものたちにも劣るの?うぅぅぅ〜ひどい!」白崎雪乃は大げさに叫び、わざとらしく泣き始めた。

佐藤玲奈は口元を引きつらせた。また始まった。

「ねぇ、芝居が過ぎるよ!」

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